注文住宅の土地を買う前に知りたい!「私道負担」について
注文住宅を購入する際、土地探しからスタートする方が多いでしょう。土地を売買するときに「私道負担あり」という表記を目にすることがあり、どのような意味なのか疑問に感じている方も多いでしょう。そこで本記事では、私道負担とはなにか、発生する費用や注意点について解説します。気になる方はぜひ最後までご覧ください。
私道負担とは
私道負担とは、注文住宅を建設するために必要な土地に関連する重要な要素のひとつです。土地を購入する前に私道負担について理解しておくことは、安心して家づくりを進めるための重要なポイントとなります。
そもそも道路は「公道」と「私道」に分けられます。私道と公道は所有権や管理責任、法的地位などの観点から異なる特徴を持ち、さまざまな違いがあるものの、公道は国や地方公共団体、私道は個人や民間企業などが所有しているのが大きな違いです。
そして、私道負担とは、土地に隣接する私道(公道ではない道路)の維持や修繕費用を所有者が負担することを指します。
一般的に、土地を所有する人々が共有して使用するため私有地という認識となり、自治体による維持管理の対象外です。そのため、私道の維持や修繕にかかる費用は、各所有者が負担することになります。
「接道の義務」とは
私道について理解するためには、建築基準法によって「接道の義務」について知っておくことも大切です。接道の義務とは、「4m以上ある建築基準法で定められた道路に対し、敷地が2メートル以上接しなければならない」という法律です。
この法律により、災害時や緊急車両の出入りをスムーズにしているのですが、面しているのが幅4m未満の道路の場合では、所有する敷地から建物を後退させる必要があり、私道負担が生じます。
土地所有者が指導も所有しているケース、複数の土地購入者が共同名義で所有するケース、複数の土地購入者が細かく分筆を行い、所有範囲を決めるケースがあるほか、不動産業者が所有するケースなどがあります。
私道負担があるか確認する方法
土地購入を進める前に私道負担があるか確認する方法は3パターンあります。
まず、土地の公式な文書や地図を入手し、詳細な情報を確認する方法です。土地の所有者や私道の幅員、維持管理の責任などが記載されている場合があります。
次に、近隣住民に尋ねることで、現地の状況や負担金額についての情報を得る方法もあります。
そのほか、不動産の専門家や土地の弁護士に相談することで、詳細なアドバイスを受けることができます。
私道負担は、注文住宅を建設するうえで重要な要素です。土地を購入する前に確認し、将来の住宅計画や予算に影響を与える可能性があることを念頭に置いておくようにしましょう。
十分な調査と情報収集を行い、専門家のアドバイスを得ることで、スムーズ家づくりを進められます。
私道負担にかかる費用
私道負担でネックになりがちなことが、費用負担が発生することです。費用がかかるのか、負担が発生する場合は、いくら必要なのか事前に確認し資金計画に組み込んでおく必要があります。
なお、私道負担金については、所有者、もしくは共有している人が負担すると決められており、「道路整備」「税金」「インフラ設備」という大きく3つの負担金があります。
負担額の算出方法
負担額においては、どのくらいの面積を所有しているのか計算するのが最初のステップです。面積については「私道負担幅×土地の間口=私道負担面積(割合)」という計算式で算出できます。
たとえば住宅地で幅3.0mの道路を挟む形で、二軒の家が向かい合っている場合では、前面の道路の幅は3.0mなので、接道の義務から1.0m足りないことがわかります。この場合、不足している1.0mのうち半分の0.5mが私道負担幅となります。
そして、所有している土地の間口が12mだった場合、上記の計算式に当てはめて負担面積を計算してみると以下のようになります。
0.5m×12m = 60㎡となり、負担面積は60㎡となることがわかります。こちらの負担面積に応じて、固定資産税や不動産取得税のほか、水道管などのインフラ設備にかかる費用を負担するのが基本です。
なお、公道なら固定資産税などの支払いが不要ですが、私道は固定資産税や都市計画税、不動産取得税の対象となることがあります。ただし、私道であっても公共性の高い道路だと認められれば非課税になることもあります。
私道負担の注意点・確認すべきポイント
土地を購入する際、私道に関連していくつか注意点があります。
「私道負担なし=私道を持っていない」というわけではない
まず、「私道負担なし」と記載されている土地は、私道がないわけではなく、所有者が不動産会社などの第三者であり、土地所有者が維持負担を負わないという意味になります。
費用負担がないのはよいことですが、道路が通りにくくても勝手に修理できなかったり、通行料を請求されたりする可能性があります。
私道負担がある場合、いくつかのリスクがある
また、「私道負担あり」と記載されている場合も、さまざまな注意点があります。たとえば、先に解説した通り、各種税金や道路の維持や修繕費用を所有者が負担しなければならない場合があります。
複数の所有者で共有している場合は、面積に応じて負担割合を計算するのが一般的です。日常的に利用する道路であるとはいえ、予期せぬ大きな出費が発生する可能性があるのは注意しておくべきポイントでしょう。
また、所有者全員が同意しない場合や、負担金額に納得がいかない場合には、トラブルに発展する可能性があります。
さらに複数名で所有する場合、修繕やインフラ整備に関する決定や変更には全ての所有者の同意が必要となります。
意見の相違や取引の難航などにより、近隣住民と折り合いがつかずトラブルになる可能性もあるでしょう。
加えて、他の所有者とトラブルがあると私道が利用しにくくなるのも懸念点です。使用時間や通行制限、駐車場の利用などに関する意見の相違が生じた場合、利用が制約されることがあります。
生活に欠かせない道路である以上通らなければなりませんが、トラブルを抱えたまま利用するのは心理的負担が大きいといえます。
他人の通行を完全に阻止するのが難しい
個人で所有する場合でも、所有者以外の通行を完全に阻止することは困難であり、近隣住民や関係者の利益を害することがないように配慮する必要があります。
所有者であるとはいえ、道路上に勝手に何かを建設したり、他人の通行を阻害して、自分や家族だけが通れるようにルール化したりするといったころはできないので注意しましょう。
このように、起こりうるさまざまなリスクを考慮したうえで、所有者間の合意や契約内容の明確化しておくことが欠かせません。魅力的な土地であるとはいえ、将来的に起こりうるリスクを想定し、後悔のない家づくりを検討しましょう。
また、私道に関して疑問や納得できない点がある場合は、そのまま土地購入を進めるのではなく、不動産会社の担当者など専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
私道負担のある土地を購入する場合、さまざまなトラブルやリスクがあります。公共の道路では起こりえない費用負担などが発生する可能性があるほか、共有名義で発生しがちなトラブルにも留意しておく必要があります。どんなに魅力的な土地でも、私道負担によってトラブルに発展することがあります。近隣住民とトラブルになると、日々の生活で精神的負担を感じることになるため、ポイントを押さえて慎重に家づくりを進めるようにしましょう。